2008年02月25日

「キレイ社会」の落とし穴

菌との適度な共生社会が人体と地球環境の健康を促進
●ほんの数十年前まで、日本人の半分以上はお腹に寄生虫を“飼って”いた。ところが戦後の高度経済成長期を経て、生活が豊かに、清潔になるにつれて、寄生虫の感染率は急速に下がっていった。そうしたら、花粉症やアトピー性皮膚炎などに代表されるアレルギー病が急増した。ここには明確な因果関係が存在する――。
●人間総合科学大学教授で東京医科歯科大学名誉教授の医学博士・藤田紘一郎氏は、この仮説のもとで寄生虫の人体感染によるアレルギー抑制効果を発見。40年にわたって寄生虫や菌と人間との共生について研究を続けている。また、寄生虫学をユニークな文体で解説した多数の著書やメディアへの出演によって、世間からは「寄生虫博士」の愛称でも呼ばれている。
●藤田教授は、「清潔」を追求するあまり、人間の汗や体臭までをも消し去ろうとする現代日本の「キレイ社会」のエスカレートぶりに警鐘を鳴らし続けてきた。確かに、抗菌グッズや消臭剤、防腐剤などが普及すれば、それに伴い寄生虫や各種菌などを撲滅に追い込む。
●果たして、このような“潔癖指向社会”は、人体や地球環境にどのような変化を与えるのだろうか? インタビュー前編では、共生する寄生虫と菌が人体に及ぼす好影響と、その寄生虫激減の理由、リスクなどについて、藤田教授に分かりやすく語ってもらった。
インドネシアでの驚愕体験人糞が流れる川の子供たちは病気知らず――寄生虫といえば悪者ととらえる風潮の中、藤田教授は以前から「寄生虫や微生物がいない清潔過ぎる社会は、逆に不健康である」と主張され続けています。まずどのような経緯で、人間と寄生虫の関係について研究を始められたのでしょうか?
藤田 紘一郎 教授(以下、敬称略):  私の研究は、正式には「寄生虫学」「感染免疫学」「熱帯病学」で、バイキンやウイルス、そして寄生虫などで起こる感染症の専門家に位置づけられています。そもそも私が寄生虫に興味を持ったのは、40年前に訪れたインドネシアのカリマンタン島での経験がきっかけです。
その村は炊事、洗濯、水浴び、トイレといた具合に生活のすべてを同じ川で行っており、子供たちが遊んでいる隣に人糞が流れているという状態なんですね。見た目には、それはそれは汚い(笑)。
最初は驚いて「病気になるよ!」と注意していたのですが、そこに通い続けている内に、村の子供たちが日本の子供よりもはるかに健康であることに気付きました。特に、彼らには喘息(ぜんそく)やアレルギーなどの症状がほとんど見られません。
そして分かったことが、多くの子供たちが寄生虫に感染していたのです。これに対して、日本人の寄生虫感染率は戦後、急激に下がりました。1950年には感染率62%でしたが、1965年には感染率で2%を切っています。

医学部 受験 個別指導――寄生虫感染とアレルギー疾患の因果関係は統計上証明されているのでしょうか?
藤田:  はい。例えば花粉症が日本で初めて認められたのは、1963年です。そしてアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくと共に、1960年代後半から現在に至るまで増加を続けています。私は三重県の田舎育ちですから、子供のころには多くの仲間がお腹に寄生虫を持っていて、虫くだしを飲んでいたものです。そして当時の子供たちは、杉の木の側で遊んで大量にスギ花粉を浴びても、花粉症とは全く無縁でした。
そこで「寄生虫が人間のアレルギーを抑える役目を果たしているのではないか?」と考え、研究を始めたのです。しかし、この考えに賛同して一緒に行動してくれる人は誰もいませんでした。医学部 受験 個別指導結局、1977年に寄生虫のアレルギー抑制効果を発見するのですが、その時も日本の学会からは無視されました。そこで『笑うカイチュウ』(講談社)などの本を出すことで、一般の方々に人間と寄生虫の素晴らしい共生関係をアピールし続けてきたのです。医学部 受験 個別指導寄生虫感染によるアレルギー抑制のメカニズム――まず、我々がアレルギーを起こす原因について教えて下さい。
藤田:  アレルギーは、例えばスギ花粉やダニの死骸といった特殊な物質が人の体内に入ると、IgE抗体という物質が出来、それが鼻粘膜などの肥満細胞にくっつきます。これに、再び体内に入ってきたスギ花粉やダニの死骸の抗原が結合することによって発症します。
花粉症では、スギ花粉に何度もさらされた人は、体内にスギ花粉に反応するIgE抗体を持ちます。このような人が再びスギ花粉にさらされ、吸い込まれた花粉が鼻粘膜に達すると、そこで肥満細胞に結合しているスギ花粉IgE抗体と花粉抗体との結合が起きるのです。それによって、肥満細胞が破れ、内に入っているセロトニンやヒスタミンといった化学物質が放出されて、アレルギー症状を引き起こします。医学部 受験 個別指導この反応が鼻の粘膜で起こると、鼻汁を分泌してくしゃみを連発させます。眼の結膜で起こると、涙が出て目が真っ赤になるというわけです。
アトピー性皮膚炎の場合は、皮膚においてダニ抗原とIgE抗体が結合し、それが肥満細胞と付着すれば発症すると考えられています。
医学部 受験 個別指導
――では、なぜ寄生虫が人のアレルギー症状を抑えるのでしょうか?
藤田:  寄生虫が人に感染すると、理由はよく分かっていないのですが、アレルギー反応の元になるIgE抗体が人の体内に多量に作られます。おそらく、寄生虫が人の体の中で楽に暮らせる環境作りのためにIgE抗体の増加を促進しているのでしょう。医学部 受験 個別指導この時に作られる寄生虫由来のIgE抗体はものすごく多量ですが、その大部分はスギ花粉やダニ抗原とはまったく結合しないタイプのものです。我々は、これを「非特異的なIgE」と呼んでいます。そして寄生虫に感染した人が、スギ花粉やダニ抗原にさらされたとします。この人は既に多量の非特異的なIgE抗体(スギ花粉やダニ抗原などとは反応しないIgE抗体)が既に肥満細胞表面を覆っているので、スギ花粉などが入ってきても、肥満細胞表面のIgE抗体には結合できず、したがって肥満細胞は破れません。だから、セロトニンやヒスタミンなどの化学物質は放出されず、アレルギー反応は起こらないということになるのです。
江戸時代は理想的なエコ社会!人々はムシと上手に暮らしていた――かつての日本人は寄生虫とどのように付き合ってきたのでしょうか? そして寄生虫感染率が急速に下がった理由の背景には何が考えられますか。
藤田:  日本人は元来、きれい好きな民族です。特に江戸時代は、世界的に見ても人々が清潔な暮らしをしていました。銭湯の流行にも象徴されているでしょう。ただし、寄生虫を必要以上に駆除しようとはしませんでした。
我々は今でも「ムシの知らせ」とか「ムシが好かない」、「腹のムシがおさまらない」といった言葉を使いますが、この“ムシ”は寄生虫を指しています。それぐらい、人のお腹の中に寄生虫がいることは自然だったのですね。医学部 受験 個別指導もちろん、寄生虫が増え過ぎては症状が出てきます。だから「海人草(かいにんそう)」に代表される虫くだし食材があり、それらを活用することで体のバランスを取っていたわけです。また昔の日本は糞便を肥料にしていました。日本人は生野菜を食するという習慣を持っていませんでしたから、必要以上に寄生虫を増やすことはなかったのです。ところが終戦後、マッカーサー率いる進駐軍が来日し、日本の生野菜を食べて寄生虫に感染するということに悩まされました。そこで「日本は野蛮な国だ!」と批判が起こり、寄生虫を減らそうという動きにつながっていったのです。これが日本における清潔志向の始まりであって、それまでの“寄生虫と共生する”という考えがなくなっていきました。医学部 受験 個別指導糞便肥料が化学肥料に変わり、水洗式トイレが増えました。すると必然的に下水処理施設が増えて、寄生虫激減の裏で膨大なお金とエネルギーが費やされ、温暖化など環境破壊にもつながっていったのです。
ところがそうやって清潔志向が進むのに反して、アレルギーなどの症状は増加の一方です。その点、江戸時代は糞便をリサイクルし、適度に寄生虫とも付き合う知恵を持った素晴らしいエコ社会だったと思いますね。医学部 受験 個別指導体の洗い過ぎに要注意!皮膚を弱める過剰な「キレイ」志向――今から江戸時代の暮らしに戻ることは不可能です。とはいえ、現代人の清潔志向は度が過ぎているとも感じられます。
藤田:  おっしゃる通り、今の日本社会は「キレイ」を追求し過ぎですね。理由は、「キレイ」がビジネスになるからです。お金になるから、抗菌や消臭の商品が売れるのです。
しかし、これは本来人間の体から出る物質や匂いを否定する行為に他なりません。例えば近年話題の「加齢臭」とは、子供を安心させるために父親や祖父が発する匂いです。また制汗剤もはやっていますが、これを使い過ぎると汗をかかなくなってしまいます。そういうことを繰り返していると、結局は人間が自分の体を弱めてしまうことになるのです。
お風呂も同じです。最近は1日に何度も体を洗わないと気がすまないという人が増えているようですが、人間の皮膚の表面には悪質な微生物やアレルゲンから身を守る「皮膚常在菌」がいます。皮膚常在菌は表皮ブドウ球菌、ニキビ菌、真菌類など約10種類存在しますが、体を洗い過ぎると、この菌がなくなってドライスキン(乾燥肌)となり、アレルギーなどにかかりやすくなるのです。皮膚常在菌が弱ってくると白血球が活性酸素を出して処理します。この活性酸素が、皮膚を弱めるのです。ちなみに、皮膚常在菌は一度石鹸で体を洗うと90%もなくなることが実験で分かりました。ただし、10%残っていれば、若者ならば約12時間、高齢者ならば約20時間で元の状態に戻ります。ですから、体の洗い過ぎには注意しなければいけません。1日に何度も洗う必要はないのです。最近、大学の皮膚科に通院する患者さんの多くは、体の洗い過ぎに原因があるようです。何でも、やり過ぎはマイナスなんですね。
posted by ore at 15:20 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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